山﨑水都(やまさきみなと)さん
高知県高知市出身。
地域おこし協力隊は2016年7月~2019年6月まで安芸市にて着任していました。
協力隊では「ちりめんじゃこ」を活かした企画立案、PR、地域活動の支援を担当。2020年1月から田舎暮らし体験のできる民泊事業「あそびば」を開業し、現在はあそびばのオーナーとして古民家修繕や耕作放棄地を開拓中!
安芸市やあそびばの魅力はtwitterから発信中です。https://twitter.com/3710Venezia
― 熊本地震の震災支援から田舎暮らしの魅力に目覚めた
東西に広がる高知県の東部に位置する安芸市は、土佐湾と四国山地を有する風光明媚な都市です。この場所に山﨑水都さんは暮らしています。
山﨑さんが田舎暮らしの魅力に目覚めたのは被災地での体験がありました。山﨑さんの出身は高知県高知市。県内の短期大学を卒業してすぐの4月に熊本地震があり、地震発生の翌日は被災地の南阿蘇村まで支援に駆け付けてボランティア活動に参加。そこで目の当たりにした被災地の被害状況は言葉には言い表せない過酷なものでしたが、人と人との温かなつながりや田舎での暮らしに感銘を受け、「いずれ自分自身も田舎暮らしがしたい!」と思い描くようになったそうです。
「災害直後はお金がたくさんあっても意味がない。水や食べ物が一番大切で、その大切なものを分け合う田舎の助け合いの精神に惹かれました」と山﨑さんは振り返ります。
被災地支援から高知に帰ってくるとすぐに地域おこし協力隊について調べました。もともと学生時代から協力隊になることを決めていた山﨑さん。山﨑さんの人懐っこい性格はどこに住んでも友だちがつくりやすいことは確信できていました。
高知県出身ということもあり、その自由で豪快な県民性は自分と合っていたため、高知県内で協力隊になると決め、生まれ育った高知市よりも自然豊かな場所として、安芸市の協力隊に着任することに。「学生のときに安芸市で食べた『ナスのたたき』がめっちゃおいしくて!その味が忘れられなかったのも安芸市を選んだ理由です(笑)」と笑顔で話してくれました。
― 地域おこし協力隊のミッションで得られたものとは?
地域おこし協力隊でのミッションは、安芸市名物の「ちりめんじゃこ」を生かした企画立案、PR、地域活動の支援でした。「観光課の課長が柔軟な方で、自分がやりたいと思ったことを端からやらせてもらえてありがたかったです。たくさんの経験と人のつながりが今の自分の糧になりました」とのこと。
活動の一つに「安芸ちりめん丼学会」と名付けられた任意団体の支援がありました。この団体では、安芸市をちりめんじゃこの聖地にするべく、地元名物を盛り上げるPR活動をしています。具体的な活動は県内外のイベントで「ちりめん丼」を販売すること。こういったイベントの運営や、しらす丼の販売についてノウハウを得ることが、次の活動につながっていきました。
山﨑さんの持ち前の真っすぐで強い意志、そして協力隊時代に少しずつ学んでいった田舎暮らしのスキルが、ユニークな民泊事業の構想となっていきます。
起業に成功した秘訣を聞くと、こんな答えが。「高知県民には“お裾分け文化”が根付いていて、新しく何かをする人を手助けしてくれる風土があります」と山﨑さん。実際に、協力隊を経て起業をする人は少なくなく、山﨑さんの周りでも清掃業やゆず農家など、それぞれの「やりたいこと」を仕事にしているそうです。
― 地元の人たちとのつながりを活かし、民泊事業「あそびば」を開業
協力隊での経験や人とのつながりは、現在の民泊「あそびば」の事業立ち上げにも直結しています。例えば、協力隊のときにちりめんじゃこを獲る「シラス漁」の漁師さんたちと仲良くなり、「あそびば」のアクティビティの一つに「漁師体験」ができました。「獲れたての生シラスは苦みがなく独特の甘さがあるんですよ。船の上じゃないと味わえないのでみんなに知ってほしい! それになんと言っても朝の海がきれいで最高!」
また、「農業体験」では高知県が日本一の生産量を誇るナスの収穫が、そして「郷土料理体験」として、高知名物のカツオの藁焼き体験など、田舎あそびの体験アクティビティが勢ぞろい。
これらのユニークなアイデアはすべて協力隊時代に得た人間関係からインスピレーションを得たもの。誰から・どうやって学んだのか尋ねると、「高知市のおじいちゃんたちって比較的、会社勤めをしていた人が多いんですが、安芸市は漁師や農業をしていたある意味クリエイティブな人が多い。その方たちから直伝の田舎遊びのやり方を教えてもらいました。シラス漁も、かまどご飯の炊き方も!」と返答が。山﨑さん、コミュニケーション力が高い!
これまで暮らしのなかで「おもしろい!」と感じた経験がベースとなった民泊事業は、Youtuberが撮影に来たり、ローカル番組に出演したりと注目度大。
また、シラス漁の漁師さんたちと町おこしや漁について話をするなかで、次第に心の距離が近づき、「何か一緒にやろう!」という機運が高まっていったそう。協力隊退任後は、コロナ渦での不安定なビジネスを盛り上げるべく「しらす丼」のお店を出す計画も進んでいます。なんと山﨑さん、食品衛生管理者の資格も率先して勉強中。この行動力には脱帽です…!
— これからはもっとディープな田舎遊びを追求!
これからますます安芸市の大自然を外に向けて発信していく予定の山﨑さん。今後のビジョンを聞くと、豪快な答えが返ってきました。
「今は山つきの家が欲しいんです。ヤギとアヒルを飼っているのですが、さらにダチョウも飼ってみたい。動物たちと共存しながら楽しく暮らすには山がないと難しいんです」とにっこり。気になる体験プログラムも、「モリつき体験」をするなど、独自性の強いものを意識して計画中なのだとか。
正直なところ、まだまだ日本中はコロナ禍で先が見えにくい状態です(2021年6月現在)。しかし、それを吹き飛ばすほどの明るさと情熱、行動力を持っている山﨑さんの周りには、共感する仲間がたくさん集まっています。山﨑さん流の「あそびの提案」は、もっとディープに、そして意外性があって楽しいものになっていくことがイメージできました。