高濱 望(たかはまのぞみ)さん
広島県から高知県四万十市へ2016年に移住。地域おこし協力隊を2年間務めた後、四万十川の見える空き家をリノベーションしてゲストハウスを開業。その他、オンライン起業のテクニカルサポート、セラピスト、「NPO法人四万十市への移住を支援する会」の移住アドバイザーなど、複数の生業を持つ。趣味は草刈り、庭木の剪定、マトリョミン演奏。
移住女子なりわいヒント
― 広島から高知へ。自分が選んだ環境で生きる
四万十川とその支流の黒尊川が合流する四万十市西土佐の口屋内(くちやない)地区。その小さな集落に高濱望さんは移住してきました。2016年のことです。
移住を考えたきっかけは、会社を辞め、プライベートでは離婚があり、広島に住む理由がなくなってしまったからだそうです。ちょうど取得したセラピストの資格があれば「どこでもやっていける!」と考え、前向きに移住する地域を検討し始めました。
地域おこし協力隊の募集数が多い高知のなかでも、フリーミッションのエリアを選んで四万十市へ下見にやってきました。
「黒尊川流域を見たときに、そのきれいな景色に一目ぼれしました」と高濱さんは振り返ります。
地域に馴染み、この地域の人たちと親しくなることと並行しながら、ゲストハウスができる家を探しました。あるとき地元の方が関東へ引っ越すことが決まり、空き家を借りられることに。これが移住してからの転機となります。
「移住っていいですよ。自分が選んだ環境で、自分が好きで関わりたい人が増えていくのは最高です。会社員のときは家と会社の往復でしたから。私は四万十市でゲストハウスをすることは決めていたので、家が決まった時点で協力隊を卒業。それから家をリノベーションし、ゲストハウスを開業しました」と当時を振り返ります。
しかしゲストハウスはコロナ禍によって止む無く休業せざるを得ない状況になっていきます。
― 仕事を複業し、やりたい仕事で楽しく暮らす
2021年、自分の起業経験とオンラインのノウハウを活かして、起業したい人向けの動画制作講師や動画クリエーターとして新たな道を歩みはじめました。
「オンライン講師の仕事をするときは、四万十市に住んでいることを私のブランドの一つとして打ち出しています。地方で豊かな自然のなかで暮らしながら、世界中の方を対象に講師として活動を始めました。そしてやはり、受講生の方は私と同じように田舎に暮らす人が多いんです。好きな場所で仕事ができるっていいですよね」と高濱さん。
もともとは高濱さんがセラピストをしている手技の情報をオンラインで配信する予定でした。しかし少しずつ「自分の技術を伝える」ことから「クライアントのノウハウを広める」立場へとやりたいことのベクトルが変わっていったといいます。
このように華麗に舵を切り替えながらたくましく前に進む高濱さん。アイデアの刺激となっているものはなんなのでしょうか?
「高知はフリーランスや個人事業など自分で仕事をしている人がたくさんいます。その人たちが刺激です。私が複業しているなかの一つにNPO法人四万十市への移住を支援する会での移住支援の仕事があるのですが、そこのメンバーは兼業が多いんです。自営業の先輩方から仕事のアドバイスをもらえることは一つの心の支えになっています」。
お話のなかであったように高濱さんは四万十市のNPO団体で週2日ほど仕事をしていて、「複業」を生業にしています。複数の仕事に従事することがバランスよく仕事ができる秘訣なのだとか。
コロナが落ち着いたら少しずつ、ゲストハウスやリンパケアのサロンも再開を視野にいれていることもこっそりと打ち明けてもらいました。
― 四万十の暮らしで手に入れた、贅沢な環境と人付き合い
高濱さんの住まいは小高い山の中腹にあり、眼下に四万十川を臨めます。周囲に響くのは野鳥の声。
「広島の生活と比較すると何もかも変わりました。家から四万十川が見えて、鳥の声で目が覚めるなんて最高だと思いませんか?…ときどき、草刈りの音で目が覚めることもありますけど(笑)」とにっこり笑います。
自宅で行う仕事の息抜きは庭の草むしりです。何も考えずに手だけを動かすことで無心になり、いい気分転換になるのはここへ来て知ったことだとか。
「ここは日常のなかに自然があって贅沢な環境なんです。例えば、夜、車で帰ってきて、ふと見上げた星空がきれいで癒されることがしょっちゅうあります。それから、アウトドアとか自然の遊びをわざわざしなくても、黒尊川まで行けばホタルが見られるんです。都会では考えられませんよね」と、四万十の環境に感動していることを生き生きと話してくれました。
また、人付き合いも変わりました。移住する前は家と会社の往復だったため地域に知り合いも少なかったそうですが今は違います。
移住支援の仕事では、移住者や移住を希望する人に地域の人を紹介し、ご縁をつなぐお手伝いをしています。ゲストハウスを手に入れられたのも、移住支援の仕事に声をかけてもらったことも、すべて地域の人のつながりからです。高濱さんのように地域に溶け込む秘訣を聞いてみました。
「ん~、そうですね。基本的なこととしては笑顔で挨拶です。それから自分自身をよく見せようとしないこと。こちらの方は、意見をハッキリと伝えたほうが心の距離が近くなりますよ。仲良くなるポイントは腹を割って話せることです」。
― これからもいろんな生業にチャレンジ!
2021年に起業したオンライン講師のお仕事は軌道に乗り始めたばかりで、少しずつつながりができてチャンスを形にしている状態です。
最後に、高濱さんのこれからの夢をお聞きしました。
「結構、オンラインでの仕事が忙しくなっているので、もう少ししてからはペースを落として、面白そうな話がきたときに飛びつけるようにしておきたいと思っています」と高濱さん。
興味のアンテナをあちこちに立てて、自分が「楽しい!」と思ったコトに飛びつくスタイルはマネしたい人が多いのではないでしょうか? 起業女子のフロンティア、四万十市で輝いています!